1920年のアイルランド南部の町・コーク。
医者を志す青年デミアンはロンドンでの勤務がきまり、アイルランドを離れようとしていた。
そんな時、仲間がイギリスから送り込まれていた武装警察ブラック・アンド・タンズの暴行を受け、命を落としてしまう。
事件をきっかけに医師になる志を捨てたデミアンは、やがてアイルランド独立を目指す戦いに、仲間とともに身を投じていく。そんな彼らのゲリラ戦に苦しめられたイギリスは停戦を申し入れ、戦いは終結するのだが、両国間に結ばれた講和条約の内容の是非をめぐって、アイルランドは内戦に突入してゆくのだった。
切なくて、本当にどこまでもつらーい、つらーい映画。
実際はこんなもんじゃなかったのだろうけれど、十分その悲劇が伝わってくる。
ある程度、アイルランドの歴史背景は学んでおいたほうが良いと思います。
HPで丁寧に解説がされているので、参照されると良いと思います。
公式サイト→麦の穂を揺らす風
アイルランドの独立が認められたのは1949年。しかし問題は今も進行形。ある程度穏やかにはなっているのでしょうが、これを映画にするというのは大変なことだったのではないかと思います。
監督がケン・ローチ(Ken Loach)というイギリス人なのも、注目できる点ではないかと思います。
この映画の中で、何が一番つらいって、イギリス人とアイルランド人が戦争することじゃないんです。同胞達が、そして兄弟までもが闘わなければならない、つまり内戦・・・これではきっと、イギリス人の思う壺だったのでしょう・・
戦争って、何か一線を超えるっていうか、やっぱり何か動かしちゃいけないところまで動かしちゃう力が備わっていると思う。
それから、一つ問題提起をしていると思うんです。
中学なんかで教えられる歴史の中での戦争っていうのは
「どっちが悪くてどっちが勝ったか」っていうことだった。
でも、実際はそんな単純なもんでもない。
デミアンがイギリス兵を挑発するシーンがあるんです。
そこでなぜかBlack and tans(第一次世界大戦の復員兵で主に組織されている)の1人が興奮して、
「我々はソンムの戦いで多くの戦友を失った!」
と、吐露するんですね。この1916年の戦いでイギリス軍は19,240人が戦士したそうです。
ソンムの戦い(Wikipedia)
アイルランドの革命が起きたのが1920年ですから、まだ痛手が消えてないのでしょう。
こういうシーンで、やっぱり白黒つければいいって問題じゃないって、改めて思います。
人々の狭間から戦争が湧き出てくるんでしょうかね・・沢山の人間が関わっているのだから、本当に複雑なことばかりです。
それでも・・・本当に、本当に英国は負の遺産を多くの国に残してきた。
他の印象的な台詞は↓
・「あいつは英語で名を言わなかったから殺された たったそれだけでだ」
・幼なじみのクリスをデミアンが殺すシーンで「この戦いはそれだけの価値があるのか」
それから主役のキリアン・マーフィーですが、始めは普通の青年ぽかったのですが、段々表情に変化がでてきてすごかった。つらいですが、さすが良い映画です。この時期に撮られたのは正解なんじゃないかと思います。
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