P152
「のこぎりを引いて小さな棒を用意することから始めて、一カ月がかりでマウス用の迷路をを作り、それから10日間ぶっ続けで、マウスの脳活動を24時間記録しました。すると学習によって迷路をすばやく走り抜けられるようになったマウスは、レム睡眠が大幅に増えたんです。覚えないマウスには、そうした変化はみれませんでした」
//ジュヴェ
P181
ニューヨークの地下鉄から貿易センタービルの近くのとおりに出たとたん、炎上するビルから人が次々に飛び降りる光景を目撃した女性は、その後何日も同じ場面を夢に見てうなされた。
しかし数週間後、トラウマ反応が収まるにつれて、やはり夢は変化した。
ビルから落ちる日と足りをなすべもなく見ているのではなく、パラシュート代わりにカラフルなかさを差し出してみんなを救うという内容になったのだ。
//『The Cell』は、患者の夢の中に治療者が入っていく。
そこで夢のストーリーを変えていくのだ。もしかしたら、これが現実に可能になる日はくるのか・・・・・
P209
1965年の5月のある朝、ポール・マッカとニーが目を覚ますと、頭の中に音楽が流れていた。
そうだ、夢を見たのだ。夢の中でもクラッシックの弦楽アンサンブルの演奏で同じメロディーが流れていた。それはとても心にしみるメロディーだった。
マッカートニーは起き上がって、ベッドのそばにあるスタンドピアノでその曲を弾いてみた。
・・・マッカートニーはその曲のタイトルを調べてみたが、あちこち探しても見つからない。人に聞かせると、誰も聞いたことがないという。それどころか、メロディーの感じでは、君が作った曲のようだといわれる。
それでも、マッカートニーは夢の中で曲想を得たなどとはどうしても信じられなかった。
だから、そのメロディーに遊び心でナンセンスな歌詞をつけてみた―スクランブルエッグ、ああ、ベイビー、君の素敵なレッグ・・・。
自分のオリジナルだとようやく確信が持てると、マッカートニーはこの曲の仕上げに没頭し、ついにまともな歌詞をつけた。できあがったのが「イエスタディ」だ。
P216
たとえば、イライアス・ハウがミシンの発明にとりくんでいたときのこと。
機械に固定した針が簡単に布地を通るようにするにはどうしたらいいか途方にくれた。
・・・ハウは体に菜食を施した未開の部族に取り囲まれ、処刑される夢を見た。部族の戦士たちは槍を手にしていたが、見るとその槍にはとがった先端に穴が開いていた。
P256
山道を登っていた。何キロも歩き続け、深い峡谷にかかる幅の狭い橋に差し掛かった。下を除くと、渡るのが怖くなった。いっしょに歩いていた仲間がいった。「わたりたくなければ、わたらなくてもいいんだよ。今来た道を引き返せばいい」
彼が指すはるか先に延々と続く迂回路が見えた。遠回りをするのは大変そうだ。そう思った。
夢であることに気づけば、橋をわたるのはこわくないはずだぞ。自分がそう思っていることに気づいたとたん、私の夢は明晰夢になり、恐怖は消えて、私は橋を渡りきった。
P258
レム睡眠はもっともドラマティックな意識の変化を垣間見せてくれるが、そのほかにもさまざまなときに意識の状態が移り変わる。
たとえば新聞を読んでいるとき。記事の半分くらいまで来て、何を読んでいたか、さっぱりわからないと気づいたら、おそらくあなたの脳の中ではノルエピネフリンとセロニン・レベルが下がり、アセルコリンが急増したのだろう。
それによって頭がぼんやりし、白昼夢の中にさまようと、ハーバードの神経学者スティックゴールドは説明する。
「つまるところ、これが正常という意識の状態はない。起きているときは、睡眠中よりも正常なのではない。集中しているときがぼんやりしているときより正常なわけでもなければ、冷静に落ち着いているときが、興奮してわれを忘れているときよりも正常というわけでもない。どういう意識の状態が必要かは環境によって代わる。私たちの体は環境の変化に対応するため、臨機応変に状態を変えなければならないのだ。」
P269
たとえば、私たちの眼球は平均1秒に三回のペースで動く。これほど激しくぶれるカメラで捉えた画像を見せられたら、乗り物酔いの状態になるだろう。
脳には画像のぶれを修正する機能があり、そのおかげで私たちの見る世界は揺れ動かないのだ。
それだけではない。私たちが意識していないところではるかに大きなスケールの視覚識操作が行われている。
神経科学の最近の研究を生き生きと紹介したカルフォルニア大学サンフランシスコ校の眼科教授トーマス・B・チェルナー著『心の棲である脳』によると、眼球の後ろにあるニューロンの薄い膜、網膜は、目に飛び込んでくるエネルギー粒子、光子をキャッチするパラボランティアの役目をし、電気的な信号を送り出す。それによって資格認識のプロセスが始まる。
しかし、網膜から送られる伝記的な信号が、たとえば窓の外を眺めているときに見える光景を作り出すわけではない。
目にとって、世界はばらばらの光の点からなる、意味のない二次元的なモンタージュ画像に過ぎず、言ってみればスーラのような点描派の絵画を極端に顔に近づけてみたときのようなかんじである。
さらに厄介なことに、ものを見るときには常におよそ1秒の20分のの1ほどの時間差がある。
しかも私たちは、「網膜に入ってきたすべての光の点を見るわけではなく、脳が興味深い、重要だと判断したものだけを見る」と、チェルナーは述べている。
・・・約6割の男性は波長の長い赤の色素を認識できる遺伝子を持っている。だから、彼らが感じ取る色調と、残りの4割の男性が感じ取る色調は微妙に違う。
P273
私たちの見る現実のイメージは、実は記憶に蓄えられた情報に大きく依存している。
・・・生まれたばかりの子猫を視覚皮質の発達の臨界期(その時期まで発達しないと、永久に機能が失われてしまう)まで、横線のまったくない世界で育てる。
その猫の脳に刻まれた世界像には横線が存在しないので、とおり道に水平棒を置くと、猫は棒などないかのようにまっすぐ進み、棒に衝突してしまう。
P274
(//脳の活動の98or95%は無意識に行われている)この脳の中の優秀な働き、私たちの意識やコントロールが及ばないところで、私たちの活動を支持している神経を、コッホは「ゾンビ・エージェント」と呼ぶ。
P288
ここ数年、カートライトは裁判所などから専門家として呼ばれ、パラソムニア患者を調べる機械が何度かあった。
この種の患者は、徐派睡眠からレム睡眠中の夢見の状態へとスムーズに移行できずに、最初の夢が始まる前にベッドからおきだしてしまう。そして深い眠りに陥ったまま、衝動的な過食から暴力行為まで、さまざまな行動を起こす。
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