この本に登場する12人の女性。
みんなみんな、愛を求め、愛に傷つき、そしてほとんど、破滅的な結末に突っ走っている。
それは悲劇のようだけど、でもそれは、凄く力強い。
愛なんか、と思う。
命をかけるほどに求めても、それは自分をメタメタに傷つける凶器でしかない。
よく、愛ってなんだろうと考える。
この本を読んで、愛ってウィルスみたいなもので、感染して、患者同士がくっついているだけなのだろうということを改めて感じた。
全然ロマンなんてない。
同胞同士、どれくらい見られたくない部分を曝け出せるかってことなのかと思う。
その部分を見て、相手が嫌悪感を抱いたらそれまでだ。
彼、彼女は”正常”に戻る。
それは多くの場合、賢い選択であると思う。
それなのに、そんな愛なんかのために、どうして人間は時間とお金と労力を使うのだろう。
なんで求めてしまうのだろう・・・
とにかくこの本は、自分と重ねられる内容だったし、説得力があった。
でも1時間後に純愛小説を読めば、きっと愛は素晴らしい、なんて平気で思うのだろう。
流されやすいといわれそうだけど、流れるのが当然だとも思う。
愛の真義なんて、神のみぞ知るものだから。
それから・・・わたしは、この著者、唯川恵さんを今までナメていた・・・ごめんなさい。
名前があまりに可愛いものだから、勝手にオシャレな恋を描く作家として先入観を抱いていた。
確かにオシャレだ。
ほとんどの舞台がなぜか青山だし。
けど、読者をハッ!!とさせる力があると思う。
計算高いなと思った。
彼女のそういう素質が、ありふれた恋愛話にいつまでも舌に残りそうなスパイスを加えているのだと思う。
恥ずかしいけど・・・メモっておこう。響く言葉だから。
p20
さまざまなことを言葉にする自信がなかった。
言葉にしたら、私が本当に欲しいものとは違うように受け取られてしまいそうな気がした。
私が欲しいもの。
それは時間をかけた愛撫でも、敏感な場所に舌を這わされることでもない。
思わずそうしたくなるほど、私を愛しく思ってくれる宗夫の思いだ。
p134
愛しいということは、汚いという感覚を失うことだ。
私は彼の身体から流れ出るすべてのものを、舌ですくいとることができる。
平気なのではなく、そうしたいのだ。
それから、微生物になって、彼の身体の奥深くに辿り着きたいと願った。
そうしてそこに私以外の何かがあるなら、みんな食い千切ってしまいたかった。
p168
目的のレストラン・バーに着き、朋子はドアに手を掛けた。
すると不意に、今までとてつもなく長い旅をしてきたような疲労を感じた。
そして同時に、その旅がこれからも果てしなく続くのだという事に気づいて、身体が絞り上げられるほど愕然とし、パンプスの足がもつれそうになった。
p190
「けれど、僕は君のように、人生を戦場にするつもりはない」
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