真っ暗闇の中でお互いの顔も見えないのに
天井相手なのか、友達相手なのかよく分からないくらい、とりとめもなく語りあった。
悩みや、日頃思うことが、するすると、唇を止め処もなく伝っていった。
そういえば、修学旅行の夜には電気を消して顔を近づけて、よく恋バナをしたっけ。
なんでかな。
闇は、光には照らし出せない部分を照らし出す力があるのかもしれない。
この本の一番はじめに登場する、うまくいっていない夫婦の話を読んで
そんなことを考えた。
彼らは停電の夜に、お互いが話さなければならないことを話し始める。
この本は短いお話がいくつか入っている。
ほかの物語は停電とはあまり関係はないが、特徴がある。
静かで、淡々としているのだ。
かといってすらすら読めるわけでもない。
わたしはものすごく時間がかかった。
言葉ひとつひとつが繊細で、読み流してはいけないような気がするのだ。
その分、とても味わえる。ラストになって、ハッとする。
多くがアメリカとインドに関わる話ということも一致している。
そもそも作者はロンドン生まれのベンガル人の女性だ。
子供の頃に渡米して、ロードアイランド州で育った。
この本の原題は、実はInterpretor of Maladies(病気の通訳)という。
狭間にたった見方が得意なのかもしれない。
アメリカとインドの、両者の特徴がよく表れている。
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